メイキングエピソード

良い映画には、制作者しか知らないとっておきのエピソードがつきものです。もちろん『この道』でも名シーンの裏側に面白い!びっくり!偶然!驚き!なエピソードがたくさんありました。 

ここでは、そんな数々のエピソードを少しだけ紹介します! 

■白秋と耕筰の大喧嘩!止めたのはまさかの… 

映画『この道』の見どころの一つとして欠かせないのが白秋と耕筰の友情物語。そんな友情を育む中でも、この不器用な二人に喧嘩はつきものです。そんな喧嘩のシーンでも、裏側では、制作者もびっくりのエピソードがありました。 

白秋宅を訪れる耕筰。いつものように耕筰の一言に怒り心頭の白秋。 

「なんだとぉ~」と言いながら手元にあった湯呑?を遠慮なく耕筰に向かって投げつけます。間一髪で湯呑をかわした耕筰… 

しかしその湯呑、耕筰の後ろのカメラには映らない位置にいた美術スタッフさんの顔を目掛けて一直線に…誰もがぶつかると思ったその時、“ナイスキャッチ!!” 

さすが制作スタッフさんは、集中力が違いますね! 

美術スタッフさんのおかげもあり、順調に進む大喧嘩のシーン。 

いよいよ口喧嘩では収まらなくなり、取っ組み合いの大喧嘩に発展。掴みかかる白秋に対して、吹き飛ばされながらも何かで応戦しようとした耕筰が偶然にも手に掴んだのは“ねぎ”。耕筰を演じたAKIRAさんも「(白秋役の)大森 南朋さんの迫力でおもわず掴んでしまった…」と言っていたので、これから映画を見る方は、是非耕筰の手元に注目してください! 

そしていよいよクライマックス。取っ組み合いの大喧嘩で収集がつかなくなった二人を見かねて止めに入る菊子。「ちょっと、ちょっと…」と間に入っていきますが、熱くなっている二人は、そんな菊子が目に入らずぶつかってしまい、その勢いで菊子は吹き飛ばされてしまいます。その拍子に、大声で泣き始めたのは菊子が背負っている赤ちゃん。 

泣き始めた瞬間、ふと我に返る二人。無事大人たちの大喧嘩を仲裁した赤ちゃん! 

このシーンを始めて観た時、「いいタイミング!」と思っていましたが、これ実は監督を始め出演者も予期せぬ事態だったようで、監督のカットがかかった瞬間、一同大盛り上がり! 

偶然とはいえ、赤ちゃんの名演技が光る名シーンでした! 

■驚愕!山田 耕筰を演じたAKIRAさん実は… 

指揮者であり作曲家である山田 耕筰を演じたEXILEのパフォーマーであるAKIRAさん。 

劇中では、山田 耕筰を完璧に演じていて、バイオリンやピアノの演奏や指揮者っぷりも素晴らしかったのですが、実はバイオリンもピアノも指揮も、すべてこの映画で初挑戦したということです。 

AKIRAさん自身インタビューで初挑戦について聞かれた時「どれがというものではなく、全部が難しかった…」と語っていました。また童謡独特のゆったりとしたリズムはごまかしがきかず余裕をもち、気持ちを込めなければ表現できないところが、本当に大変だったと言っていた表情に、すべてが現れていて普段舞台などで表現者として完璧を求め取り組んでいる人のプロとしての精神を垣間見れた気がします。 

初挑戦でも努力し、身につけたことで改めて日本や童謡を学ぶ機会が作れたと語っていたAKIRAさん。実在の人物を演じるだけでも大変なことなのに、プロの音楽家の所作を違和感なく演じきったAKIRAさんの演技は見ごたえたっぷりです。 

■北原白秋を支えた妻たち! 

3度の結婚をした北原白秋ですが、やはりインパクトの強かったのは、一人目の妻である松下 俊子と三人目の妻である菊子ではないでしょうか。そんな2人を演じたのが、松本 若菜さんと貫地谷しほりさん。この2人が意気込みを語っているメイキングエピソードもありました。 

まずは、良くも悪くも北原白秋という人物を形成した一人目の妻である松下 俊子を演じた松本 若菜さん。「自由奔放な北原白秋に負けず劣らず自由気ままな俊子なので、子ども同士がじゃれ合うような雰囲気を出していきたい」と言っていて、まさにその通りの妖艶で気ままな雰囲気だったのですが、その一方で「監督からは、俊子という女性で北原白秋が生まれたと言っても過言ではない大事な役柄だと言われプレッシャーを感じた」とも語っていて、松本 若菜さんの並々ならぬ決意が演技にも現れていました。 

そして、なんと言っても欠かせないのが三人目の妻である菊子役の貫地谷しほりさん。メイキングエピソードで「北原白秋はいろいろな人に支えられて生きている中で、一番身近で支えていた妻菊子はこんな人物だったんだということを観た人に伝えられる演技がしたい」と言っていました。 

映画の中でも、赤ん坊を抱っこしながら、白秋の身の回りを世話して、かいがいしく動き回る様は、貫地谷さんを通して白秋を支える菊子のイメージにぴったり。最後まで白秋を支えたのはこの人なんだと思わせる素晴らしい演技でした。